2012年2月15日水曜日

【回想・再演】「紅白クラブ・ジャズ合戦[モア]」(Part 3=ダンスフロア編)


2012.1.13に開催の
「紅白クラブ・ジャズ合戦[モア]」の再演・第三弾。
今回は最終となる“ダンスフロア編”です。

ここでも、
と同じく、
オーバーグラウンドのリスナーを意識した選出を試みています。

実は、まったく内容が異なる、
ディープなラインナップも準備していました。

が、
やはり紅白なので。笑
ビギナーの方にも親しみやすい音楽性を
志向しています。

ただ、このほうが、
僕にとっては挑戦でしたね。
だって、個人的な嗜好品の羅列=ディープなコンテンツの集積のほうが
楽ですからね。。

いやいや、
だからといって、
以下に列挙するプロダクションがディープではない、
ということではありませんよ。

聴きやすいけど、聴き飽きない。
この、名曲が必ず蔵している定義をもつ楽曲ばかりを、
順番にもこだわって、ピックアップしています。

それではどうぞ。。


*****


■第三部 <ダンスフロア編>

●紅組 - 1, 2
「Mystery Of Ages (Moonstarr Edit)」Kyoto Jazz Massive feat. Bembe Segue
「Push」Mark De Clive-Lowe feat. Bembe Segue & Nia Andrews

本編のトップバッターは、Bembe Segue。
彼女は、とても好みのボーカリストですが…。
それよりも何よりも、僕にとっては、そのトラックに、
Kyoto Jazz Massiveが関与していることが重要なのです。
そう、彼ら=Kyoto Jazz Massiveは、僕の、音楽の先生だから。。
この作品はカバーであり(原作:Carlos Garnett)、
しかも他者によるエディットです。
なので、完全オリジナルではないのですが、
先生が関わる作品がリリースされたという事実は
僕にとって、2011年の最大のニュースでした。

Bembeには、
2曲連続で歌ってもらいます。
もう一曲は、この紅白では最多の登場ではないでしょうか。
Mark de Clive-Loweによる「Push」です。


●白組 - 1
「Get Started」Mark De Clive-Lowe feat. Omar & Sheila E

Mark de Clive-Loweが
ステージ上でシンセを引き続け、
メドレーで移行するのは「Get Started」。
本作が収録されているアルバム「Renegades」には、
ボーナストラックとしてラフ・バージョンが収められています。
ほんとうに僕の意思で紅白を選出できるのなら、
ぜひラフな演奏をしてほしいと、ディレクションするでしょう。


●紅組 - 3
「Sparkling Minds」dego feat. Georgie Ann Muldrow

この紅白で、何度も取り上げている、
degoのアルバム「A Wha' Him Deh Pon?」は
クラブ・シーンから発せられた作品としては…
収録曲のひとつひとつの尺が短いこと、
いわゆるサビのリフレインが少ないこと、
展開し続けて、そのまま終わるという構成が多いこと、
といった点において、異質であると感じます。
しかし、この「Sparkling Minds」は、
サビの繰り返しが存在するので、
前出アルバム内では、逆に際立っているように思います。
ところで、サビというのは、
何度も登場する/させるものなので、
そのメロディにふれたときは安心感を抱きます。
けれど、この歌はdegoによるプロデュース。
コーラスワークが、一筋縄にはいかないところが、
さすが。


●白組 - 2
「Find A Reason」Jerome Mr.J

前曲とのリンクは、
単独で、秀でたコーラスワークを完成させているところ。
昨年=2011年11月に、
自身のイベント「クラブ・ジャズ喫茶[モア]」で
マーヴィン・ゲイを特集しました。
そのときに気づいたのですが、
ひとりであらゆるパートのコーラスを構築するには、
高度な技術が必要なんです。
ただ単に、高い声と低い声を使い分けるだけでは、単調になります。
優れたボーカリストは、ひねる、裏返す、のばす…
さまざまな発声でもって、我々を楽しませてくれます。


●紅組 - 4
「Take A Look At Yourself」Shuya Okino feat. Diviniti

紅組で、ひとつ前にピックアップした作品、
「Sparking Minds」で使用されていた
ディストーションが効いた鍵盤を再びフィーチャー。
と、紹介すると、同じような世界観を想像する方が多いと思うのですが。。
曲調はまったく異なります。
また、この作品の作者・Eddie Russはデトロイト出身ですが、
そこを本拠地としていたモータウン・サウンドっぽくはなく、
現在のデトロイトを象徴するテクノの原型も見当たりません。
との、地理的/人物像的イメージも併せてみると、
より楽しめるかも知れません。
対する白組も、同じくアメリカ出身の人物が手がけていますが…。


●白組 - 3, 4
「Time Of Our Lives (Atjazz Love Soul Remix)」Santos
「Omo Oggun」Santos

今度はハウスです。
フロム・ニューヨークですが、
ニューヨーク・ハウスとは一線を画す、アフロな楽曲。
Santosによるトラックを、2曲続けてどうぞ。


●紅組 - 5
「Start a New」dego feat. Sharlene Hector

前述したように、
degoのアルバム「A Wha' Him Deh Pon?」には、
サビやテーマ・リフといった存在が、あまり見当たりません。
という意味で、この曲はツカミ的な1曲でしょう。
CDの冒頭に収録されている、という点からも、
そのような気がします。


●白組 - 5
「What's On Your Mind」Tony Cook」

2009年ごろから、
クラブ・ジャズ〜ヒップ・ホップシーンでは
80年代、とりわけブギーのエッセンスが刮目され、
そこから得られる感覚が加法というアプローチで制作に活かされてきました。
そして、一周まわった2011年は、
今度は逆に、減法/除法され、さらにそれらを乗算し…
といった感じで、完全に消化/昇華されていったように思います。
ここで紹介する「What's On Your Mind」は、
80年代に制作されたトラックを、Dam Funkがリディットしたものです。
このあとも、80'sなセンスが盛り込まれた作品を
続けて起用します。


●紅組 - 6
「Love & Hate You」dego & Obenewa

dego流の現代版ディスコ。
ビートに、明確な緩急を織り交ぜるという手法は、
2011年のクラブ・ジャズにおけるひとつの特徴ですね。
ここでキーボードを担当しているKaidi Tathamがステージに居残り、
次の曲目へ…。


●白組 - 6, 7
「To my surprise」Kaidi Tatham
「Don't hide your love」Kaidi Tatham

これらの曲は、
インストゥルメンタル編で取り上げるか、
ダンスフロア編に組み込むか、
少し悩んだのですが…歌合戦に投入しました。
ジャズの系譜に属する音楽に脈打つ、
ラフでアブストラクトなボーカリゼーションを
味わっていただきたかったからです。


●紅組 - 7, 8
「Deep Into Sunshine」Shuya Okino feat. N'Dea Davenport
「Destiny (MdCL Vs KJM Remix)」Shuya Okino Feat. N'Dea Davenport

2011年の、最大のインパクトのひとつ、
Kyoto Jazz Massive・沖野修也さんのソロ・アルバムより。
前曲の作者・Kaidi Tathamがブロークンビーツを代表するアーティスト
ということで、まずは変拍子つながりの「Deep Into Sunshine」を。
続く「Destiny (MdCL Vs KJM Remix)」も、
メインボーカリストはN'Dea Davenport。
こちらも、作曲は沖野修也さんです。
ここで取り上げているのはリミックス・バージョンで、
それを手がけているのは、Kyoto Jazz Massive・沖野好洋さん。
なので、ある意味でKJM作品と言えるチューンですね。
イントロ/アウトロではストレートなハウス・ビートを響かせながらも…
本編ではブギー感覚あふれるリズムとなっています。


●紅&白(特別出演)
「Positive Vibes (Original 12inch Boogie Mix)」Roy Ayers And Bah Samba

沖野修也さんは、先ほどの2曲を収録したアルバム「Destiny」のテーマは、
ジャズ・ミーツ・ブギーだとおっしゃっていました。
その両者を、70〜80年代に体現していたアーティストが駆けつけてくれた、
という設定です。
そのRoy Ayerがリリースした2011年の新譜は、
まさにブギーなエッセンスが骨格を成しています。


●紅&白(特別出演)
「It's Hard」restless soul Fun Band feat. Shea Soul & Light Particle

先ほどの曲は、
RoyとBah Sambaによる共作で、
ボーカルもRoyとAlice Russell(Bah Samba)の
デュエットとなっていました。
との流れで、もう一曲どうぞ。


●白組 - 8
「The Bottle (Bloddfire Edit)」Gil Scott-Heron

白組の流れにおける、
レジェンドつながりでお送りするのは、Gil Scott-Heron。
聴いていただく「The Bottle」は旧譜ですし、Gilは他界しています。
でも、なぜここでピックアップしたのかというと…
Daz-I-Kueが手がけたエディットだからです。
よりダンサブルで、そして、よりドラマティックな質感は、
現代の技術があってこそ実現するということで、選曲しました。
もし、本当に紅白としてライブが実現するなら、
ボーカルのみを抽出/再生し、
バッキングをすべて生で演奏する、
というアンサンブルで聴いてみたいものです。。


●紅組 - 9, 10
「Love And Live」Shuya Okino feat. Navasha Daya
「Still In Love」Shuya Okino feat. Navasha Daya

●白組 - 9, 10
「Sentimental Man (Root Soul Remix)」BRISA feat. Paul Randolph
「Waves Of Love (Original Disco Version)」Isoul8 feat. Paul Randolph

4時間半にわたってお送りしてきた、
「紅白クラブ・ジャズ合戦[モア]」も、いよいよ終盤。
トリは、両組とも、2011年のビッグ・ヒット・チューンで締めくくります。

「Love And Live」は、
沖野修也さんのアルバム「Destiny」収録曲のなかで、
個人的にもっとも聴いた作品です。
ハウスでもなく、テクノでもなく、
ブギー/ディスコ一辺倒な作風でもない…
まさに、ジャズが古来から有している先鋭的な感覚でもって
制作されています。

サウンド面で、
明確にブギー×ジャズを感じるのが、
「Still In Love」。
基本的には生音で作られながらも、
それらをサンプリング/エディットされることで、
タイトな音像になっていますね。

ボーカリスト・Paul Randolphも驚いたという、
「Sentimental Man」のリミックスを行なったのは、
先ほどの曲にプロデューサーとして携わっているRoot Soul。
声色の、トラックとの融合が、オリジナルに勝っています。。

最終は、
「Waves Of Love」。
周りに居るミュージシャンたちからは、
コード、メロディ・ライン、ベースのアプローチなどなど、
あらゆる構成要素に対して、
賛否の様々な意見を耳にしましたが…
僕としては、とにかく、
センスが為せる奇跡の着地点だと感じています。


*****