2011年3月26日土曜日

【回想】「クラブ・ジャズ喫茶[モア]Vol. 6」

この日の午後、
僕は、充実感と清々しさでいっぱいでした。

それは、
この後のイベントで配布する予定のコンピレーションCD、
「Sounds of Winter - Spring」
の編集を終えていたから。

その編集作業は、
この日の、DJのビジョンをクリアにさせたので、
冒頭に書いたよう気持ちを抱いていたのです。


CDが、どんな内容であるかは、
付録のライナーノーツに書きましたので、
詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが。。

選曲は、
“Vol. 6”のゲストDJ・Akihideさん(以下:ナガムーさん)
と共に行ないました。

それぞれが選出した楽曲が
交互に飛び出すという内容で、
それは、いわばCD上のバックトゥバック。

しかも、
ナガムーさん:春
僕:冬
という設定で構成しているため、
春先に発生する三寒四温という現象を、
リスニングによって体感していただけるんです。


…ひょっとしたら、もうお解りでしょうか。
そう、僕の20時からのセットは、
CDで展開した“冬”をテーマにお送りしたんです。

プレイしながら、
冬の、いろんな風景を思い浮かべましたが、
どれについても、“冷たい風が吹き続ける”
というイメージが共通していたからでしょうか。

自然と、
タイトなビート/リズムをブリッジでつなぐミックスが
多分に含まれていました。


時間の経過とともに、
どのように春を訪れさそうか、との思考が頭を支配します。

そんなとき、入口の扉が開き、
ナガムーさんが到着されました。

その温和な人柄が、
すでに春を感じさせます。

DJが始まると、
音符という名の花が咲き香り、
まさに“春”な空間が現出しました。

前出のコンピレーションCDへの収録曲がプレイされると、
一緒にCDを制作した僕には、まるでリリパのように感じられ、
ひとり、テンションが高揚するのでした。笑


ブース付近で
しばらくナガムーさんの選曲を楽しんだあと、
ふと客席に目をやると。。

常連の友達や音楽仲間の顔があり、ホッとしました。
そして、みんなと話すなかで、さらに安心感を抱いたのです。

また、これまで未参加の友人や、
DJ出演した「Freedom time」で知り合った方の来場を知り、
嬉しい気持ちが全身を支配しました。

この日は、
友人や知人ではない人と言葉を交わす機会が
数多くありました。

そのなかで、
“フライヤーを見て、気になって来てみました”
という方がおられたのです。

デザイナーと僕のアウトプットを受信してもらえているという事実と、
そしてその受信で得た感覚をキッカケに、
実際に足を運んでいただいているという現実を眼前にして、
“嬉しい”という感情の幅が
リアルタイムで広がっていく感覚を持ちました。

遊びに来てくれた人たちと、一通り交流を持ち、
再びブースに行こうとしたとき、
さらにお客さんが増えていることに気がつきました。

旧友からは、再会と同時に、
きのうも会っていたかのような感触を
抱かせてもらったような気がします。

また、連絡先は知らねども、
いつもイベントでお会いするミュージック・ラバーの大先輩が
非常にタイトなスケジュールの中、
今宵もわざわざ顔を出していただいたことを知り、
さらなるテンションの上昇とともに
平常心を取り戻せたように思います。


このテキストは
回想とともに記していますが、
綴りながら感じました。

普段にまして、
感情を表現するくだりが多いなと。

その理由が分かりました。

あえて、
ここまでは書きませんでしたが、
この日は、東北地方太平洋沖地震が発生したその日だったのです。

揺れは、感じていました。
しかし、イベントの前に、それが及ぼした影響については、
詳しく知りませんでした。

でも、テレビ中継を通じて、
その一部は目にしていました。

そして、非常に悩んだのです。

自粛という選択がよいのではないか。
そう思い、携帯電話で会場の電話番号をさがし、
親指を発信ボタンに載せるところまでしていました。

けれど、
その判断が正しいのかどうかを
ジャッジするための思考を続けるパワーがありませんでした。

そして、
たとえ僕が発信するイベントであっても、
そこに集っていただくことで、必ず元気になってもらえると信じ、
また、そうさせてみせるとの気概で家を出発したのです。

結果は、
その展望とは、まったく逆でした。

たくさんの人たちが遊びに来てくださり、
みなさんとお話し、ともに音楽を楽しみ、
そのことで、僕はアイデンティティ・クライシスに陥ることがなかったのです。

イベントを実行したことは、正解であるとの確信を抱き、
あらためて、ブースにむかいました。

すると、
そこには、笑顔で選曲されている
ナガムーさんが。

そして、ナガムーさんの呼びかけにより、
「クラブ・ジャズ喫茶[モア]」では初となる、
バック・トゥ・バックを敢行。
選曲によって享受する楽しみを、
あらためて噛み締めました。

また、ハウス・セットも展開。
こちらも初めての試みです。
4つ打ちに固有のポジティヴなグルーヴが、
“放任”とは明確に異なる“楽観主義”を自身の内に芽生えさせました。

そうして、
ハッピーバースデーのお2人をお祝いし、
会場は暖かい空気に満ちたのです。


このあと、
悩んだ日がないと言うと、
ウソになります。

ときに考え込み、
ときに懊悩し続けました。

しかし、
3.11に、
みなさんとイベントで時間を共有したという真実が、
どんなに悩もうとも、
最終的には前向きなスタンスに帰着させてくれました。

遊びに来ていただいたみなさん、
ゲストDJのナガムーさん、
MAMBO CAFEのみなさま、
ありがとうございました!


あらためて、
人は、人とともに生を実感し、
人は、人のなかでのみ生を体現できるのだということを
知りました。

そして、
そこには
いつも音楽が流れているということを。


大変な日が続きますが、
僕は、視界良好です。

どんどん前に進みます。
どんどん生み出します。


「クラブ・ジャズ喫茶[モア]」も、
進化させていきます。


これからも、
どうぞよろしくお願いします!